識の檻々

言葉と脳と虚構のはなし

tanka_202309_01

 

 

2023年9月にweb投稿した短歌です。

後編( tanka_202309_02)と併せてお読みください。こちらには文語・旧仮名遣いのものを中心にまとめています。

投稿時より一部推敲の上表記を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

 二〇二三年 九月(一)

 
 
 
 

最果てに星はありやと手を延べてアステリスクの有意のひかり

うたの日「有」
 
 
 

立ち並ぶ像の一体一体に侵されがたき空のあること

RIUM「主義」
 
 
 
 
 

脳の奥懊悩ふかく入り込めり折りかさなれる襞のうらにも

うたの日「悩」
 
 
 

あふる風なべて果無く遺伝子の舟といへどもいづこへ往かむ

RIUM「諸行無常
 
 
 

九重の夢のなかばに落ちぬれば幾たび巡るめざめの床の

うたの日「九」
 
 
 
 
 

彼は問ふRorschachのゆふぐれに映し鏡の胡蝶めぐりて

うたの日「鏡」
 
 
 

わたくしの辞書の頁を探りつつ改めゆけるあなたの筆先

うたの日「探」
 
 
 

誰某の脆きかなめを君のみぞ知る鍵付きの抽斗として

うたの日「脆」
 
 
 
 
 

禁域に手をくはへられかの村にまします杜の怒りしづかに

うたの日「され/られ」
 
 
 

日輪の陰に呑まるるその刹那疾くぬばたまの昼はおとづる

うたの日「皆」
 
 
 

鉛直の梅の立枝に干る贄やワラキア公の掠奪のごと

うたの日「百舌鳥」
 
 
 
 
 

訪ふ足の止みてはらり、と開かるる図書委員らの純なる動機

うたの日「本」
 
 
 

氏育ち争ふ人のおもてにも余すことなく西日の照らす

うたの日「遺」
 
 
 

弔ひの岸に群れゐる曼珠沙華ひたくれなゐに魂を送りて

うたの日「赤」
 
 
 
 
 

管弦の花のほころび調律の声こぼれきてふるへを待てり

うたの日「管」
 
 
 

彼方より君がうたへば曇天のウェルニッケ野に陽の射し込める

うたの日「野」
 
 
 
 
 
 
 
 

おわりに

9月中旬頃は思うように作れた感触があります。

初句指定、題詠、テーマ詠等の出題方法の別と出題元がわかるように題を付記するようにしてみましたがいかがでしょうか。レイアウト・構成についてのご意見もお待ちしております。

お読みくださりありがとうございました。