識の織々

言葉と脳と物語

新緑の浄土より‐第44回「西行祭短歌大会」report[大会篇]

 

 

→前編(観光しているだけ)はこちらです。

 

だいぶ期間が空いてしまいましたが、メインの短歌大会について振り返っていきます。

 

本番の時間が近づいてきたところで本堂の向かって右奥にある大会会場へ移動する。こちらの会場(光勝院)では普段坐禅・写経等の体験も行われているようだ。

 

 

開会・記念講演

 

開会の挨拶ののち、西行法師への追善法要が始まった。中尊寺の僧侶の皆様揃ってのお勤めも貴重ながら、普段の認識では文献上の存在として関わるばかりの大歌人とも一続きの歴史の上にあることへの感慨に浸る

 

続いての東先生による記念講演では「命を想う今昔の歌」を題として解説をいただきました。特に印象に残った5首について取り上げます。

 

願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ
西行法師『山家集
 
 

(願いが叶うなら、春、桜の花の下で死にたいものだ。釈迦が涅槃に至った二月の満月のころに。)

東先生:西行の代表歌といえばこちら。日本人の死生観の根底をなすような、悠久の命に思いを寄せる歌。臨終の頃の理想について美しい情景を伴いながら読むことで人々の死への恐怖を和らげることになったのであろう。

 

夢の沖に鶴立ちまよふ ことばとはいのちを思ひづるよすが
塚本邦雄『閑雅空間』
 
 

東先生:くすんだ曇り空の危うさの中に不安ながら立っている鶴。下句では言葉が命の代わりに永遠に伝えてくれることを述べ、幻想的イメージと箴言の組み合わせが一首中の奥行きを生み出している。

 

いつか僕も文字だけになる その文字の中に川あり草濡らす川
吉川宏志『海雨』
 
 

東先生:「文字」は自らの名前と作品のこと。肉体は消えても魂は文字の形として残ることで死への恐怖を乗り越える。文字の中の川にもまた文字が浮かんでいる様を想像させる。

 

生きながらほろぶ身体よ風花のようにあなたの記憶をあびる
東直子「學燈」2024年春号
 
 

東先生:老化に伴い機能が失われ朽ちていく身体。積雪が舞い上がりもう一度降り注ぐように亡くなった人の記憶をふと思い返す。

 

産まれたらなんと呼ぼうか春の日にきみはきっぱり別人になれ
/柴田葵『母の愛、僕のラブ』
 
 

東先生:母性に期待されるものや母子一体感への抵抗を突きつける。自分の連続物ではない別個の存在となることへの決意表明の歌。

 

 

塚本の頻繁に引用される歌の描写に対しては極めてコントラストが高い印象を持っていたためか今回掲出いただいたような淡く滲んだ情景に意外性を感じた。やはり多くの著書に当たらねば…

 

「ことばとはいのちを思ひ出づるよすが
「いつか僕も文字だけになる」


自らの生や感情を言葉という形へ翻訳することで命は永遠性を帯び、短歌を詠むことはその普遍的な大きな流れへと接続する機会となるものであると、開会の辞の中で僧侶の方が語られていた。
私事としては数か月前に親類に不幸があったことから死生観が大きく揺さぶられていたところでもあり、こうした点にも安らぎを見出せた。

全体として、生命を抽象的なかたちのまま賛美するのではなく、一瞬の瑞々しさを切り取ったり、老いに伴う喪失感新しい命と自らとの関係を味わう姿勢が見える歌を取り上げられていた。

 


 

歌会・結果発表


出詠歌143首のうち、当日参加者分について出詠順に1〜2分ほど東先生から短評をいただきました。具体性の持たせ方、描写の盛り込み方、語順の工夫などの視点から多くを学ばせていただきました。
 
少し休憩をおいていよいよ選歌の発表です。

受賞作のうち、3首とその講評を抜粋します。
このほかの受賞作についても一関地方短歌会会長 伊藤英伸氏のブログに掲載されていますので御覧ください。

 

中尊寺貫首

老いるとはすなわち孤立することか凍える胸に白熊が棲む
/佐藤美津子
 
 

東先生:斬新で意表を突く比喩の力がある。淋しさや空虚さだけではない孤独の有り様に迫っており、ユーモアも感じられる。

 

平泉町長賞

降りしきる雪の匂ひを纏ふ子は息を弾ませ図書館に来る
/片山佐依子
 
 

東先生:静けさと(室内外の寒暖差から)湯気が立つような情景が見え、場面設定に過不足がない。濃厚ではない関係の中の言葉にしない交流による心の通い合いが描かれている。

 

平泉観光協会会長賞

戸毎戸毎の名字唱えて過ぎゆけり新旧郵便配達のひと
/森田小夜子
 
 

東先生:大勢の人が関わって日々の暮らしを助けられていることを実感できる歌。「新旧」から時間の経過が見て取れ、場面選択が良い。

 

残念ながら拙歌は選外でしたが、上位入選歌は全首評の時点からどことなく場内の空気が動くようで、力のある歌であることを実感していました。今後も鑑賞眼を養いながら感覚を掴めていけたらと思います。

 

 

固有名詞を詠むという賭け

入選歌のほかに、出詠歌に岩手県内の名勝を詠み込んだものがありましたが(拙歌もそうでした)、選評内では触れられていなかったため会場から意見が挙がりました。

耳慣れない語を含む歌について、東先生からは「固有名詞を詠むことは駆け引きであるため、知らない語でも調べたくなるような仕掛けを作るといい」との助言をいただきました。私も普段から固有名詞や特定分野の用語を取り入れる癖があるため意識したいところです。

古くからの歌枕や全国規模で馴染みのある場所であればこれに限りませんが、地域的な歌材やマニアックな対象を扱う場合は開催規模や参加者の範囲を考慮するといいかもしれません。

 

参考として、拙歌はこちらです。

ひさかたの無量光院さざ波のあひだに玻璃のひらめくを見き
/眞木環
 


波の表面の質感を硬質なものに喩えた点について独自性を評価いただきました。
ただ、平泉町内の史跡である「無量光院跡」について前提情報を必要としていたことに加え、一人称視点の視覚情報のみである点にもハードルを負っていたかもしれません。

 

 


『花々は色あせるのね』

講演の中で、東先生の著書『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』をご紹介いただきました。
小倉百人一首の全首を東先生の言葉により現代短歌として再構成した作品です。

 

   花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に /小野小町

花々は色あせるのね長い雨ながめて時は過ぎゆくばかり
 

 

古語に馴染みがなくても百人一首を身近に感じられ、和歌の味わいと現代短歌のテクストを接続して読み/詠み継ぐことで歴史への合流を体感できる歌集です。

 

 

個人的に振り返ってみると、死への恐れは無価値化への恐れとも言い換えられそうに思う。そして死に接近したくなるときは誰からも忘れられたいときであったかもしれない。

歴史に残る名歌・名文に限った話ではなく、誰しも名前という短い文学を掲げ、あるいは負わされて歩いている。残りたくても消えたくても、言葉を介してわたしたちはどうしても永遠へと手を伸ばしているのだろう。

 

実在してしまいました

 

日が傾くにつれて厳かで柔らかい光が満ちてきました。

短歌会の方とお話したり、もう少し山内を散歩したりしながら会場をあとにします。

 

ということで、令和6年4月26日は生身の「眞木環」としての外形を客観的に与えられた日にもなりました。改めてよろしくお願いします。
バーチャルキャラを貫こうと考えたこともあったのでそれなりに大きな決断でした。ある意味肉体との和解を試みる一手であったかもしれません。

 

中尊寺も短歌大会も大いに楽しみましたが、ただはしゃいでいたようなものなので、仏教や美術についても今後学びながら味わって行きたいところです。思い立てばふらっと世界遺産に赴ける有難さ。

 

改めて東先生、大会の運営に携わった中尊寺の皆様、一関地方短歌会の皆様、実りある時間をありがとうございました。

 


 

今後は同町内の毛越寺で5年振りに開催された「曲水の宴」や旅先で撮った写真についてまとめたり、入手した歌集やネットプリント作品についても触れていく予定です。

 

お読みくださりありがとうございました。

 

 

 

 


 

新緑の浄土より‐第44回「西行祭短歌大会」report[観光篇]

 

短歌大会とのめぐりあい

2024年2月下旬。地域の文芸活動について調べていたところ、中尊寺で例年短歌大会が開催されていることを知った。
今回の選者は東直子先生。これは応募しなくては!

 

 

応募要項に関して確認しておきたい点があったため、詳細を伺うため中尊寺に電話を…かなり身構えたものの事務局の担当の方が暖かく対応してくださり、初の歌会を中尊寺で飾れることに。わくわく。
応募は近詠一首(自由題)とのことから、何首か詠んでいたうち夫からの印象も参考として提出しました。

 

平泉へは思い立てばすぐに行ける距離ではあるものの、数年振りの参拝を兼ねてじっくりと旅のムードに浸ることとして…年度末を越えていこう。

 

ききもせず束稲山のさくら花よし野のほかにかかるべしとは
西行法師『山家集
 
 

(今まで聞いたことがなかった。吉野山の桜のほかに束稲山のような美しい桜の名所があろうとは。)

西行は生涯のうちに二度奥州藤原氏のもとを訪れている。その旅の折、現在の平泉町にある束稲山に広がる桜への思いがけない感動を詠んだ。

 

好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ
東直子『青卵』
 
 

連作「燃えるみずうみ」の表題歌。カヌーに世界をすべて乗せたまま、思い出も〈あなた〉も湖上の炎の中に燃え果ててゆくのだろうか。堪えがたい哀惜とそれでもなお未練を断つ覚悟を感じる。

 


大会当日


迎えた4月26日金曜、月見坂を上って中尊寺へ。門前では八重桜が参拝客を出迎えている。

 

 

事前調整の上この日に年休をいただいている。
年度末を経て体調が厳しい状況にあったためここに年休があって命拾いした…この判断は正解だったかもしれない。

 


まずは本堂の釈迦如来坐像(丈六仏)へ御挨拶です。

丈六仏とは…仏は身長が1丈6尺 (約 4.85m) 、座って8尺 (2.43m) といわれるため、つまり原寸大の仏ということ。如来像はこの大きさで建造するのがひとつの基準とされる。

山内の宝物館である「讃衡蔵」には他に同サイズの1/1阿弥陀如来×1、薬師如来×2があるのでこの近辺には1/1スケール*1の坐像が4体…かなりの迫力。

 

総本山・比叡山延暦寺にて最澄が灯して以来護持されつづけ、天台宗の主要寺院に分けられているという「不滅の法灯」が坐像の両側で静かに照らす。もしこの管理を任じられたとしたら気が張ってたまらないだろう。

 

 

参拝後に当面のおみくじを。
歌詠みをしていると「学業・技芸」の欄をやたら見てしまう。仕事の△を気にした方がいいが…しかし今回は「吉」と◎がふたつで概ね満足したので高望みはせず、結ばずに持ち帰ることとした。△を気にしなさいよ。

 

浄土の郵便ポストは瑠璃色。この子は売店の飼い猫らしい。

 


現し世を少し離れて、山内へ

山内に点在する御堂、句碑や歌碑を巡りながら金色堂へ向かう。平日のためほどよい人足でゆったり散策しやすい日だった。体調が厳しかったので薬師堂には御賽銭を少し上乗せです。

 

五月雨の降り残してや光堂
 


自然の猛威や戦乱により数多の伽藍や像――文化が喪われた。しかし五月雨の打ちつける歴史を堪えてなお金色堂は輝き続けている。

 

 

みちのくの昔の力しのびつつまばゆきまでの金色堂に佇つ
昭和天皇御製
 


昭和45年国体の行幸啓の折、在りし頃の岩手の栄華に寄せて中尊寺金色堂をお詠みになられた。

 

金色堂

東京国立博物館での特別展を終え、先日還座されたばかりの中央壇の阿弥陀様御一行は疲れの気配を感じさせずに佇んでいる。またとない外部展示の機会に当たって尽力された関係者の皆様にも頭が上がりません。

 

 

防護ガラスに隔てられた金色堂はパンフレットや報道写真で見かける印象より抑えられた仄かな光に満ちている。一般人は撮影禁止ではあるが、この灯りの加減をそのままに写すのは難しいだろう。
調光の妙も手伝い、柔らかな極楽浄土の輝きが引き出される。*2

しばしの間ほわーっと眺めます…

 

 

今回のもう一つのお目当て、金色堂建立900年記念の御朱印を授受した。細密な切り絵から台紙が透けてえもいわれず美しい。

 

このほかに通常の御朱印も。

ちなみに中尊寺御朱印巡りをされる方は金色堂御朱印帳を授受してから巡るのがおすすめです。1頁目に貫首の揮毫、2~3頁で見開きを使った特別なレイアウトでいただけます。

 

休憩、そして本番へ

昼食は敷地内食堂の「かんざん亭」で蕎麦をいただく。


こちらは期間限定の地元の葉わさびを使った冷蕎麦、さりげない辛味が清涼感を引き立てている。

 

 

 

デザートに寺の…ティラミス。寺のユーモアですね。自然薯が使われているそう。

 

狙ったかのように、いや狙っているのがあからさまだが中公新書『浄土思想』をお供に持ってきている。中尊寺の空気をページに吸わせつつ、アイスコーヒーでさっぱりと本番への心積もりを整えます。

 


 


さて、いよいよ歌会会場へ…というところでPart.2に続きます。
今後の作歌に存分に活かされるお話を伺えましたので、お楽しみに!

 

 


 

*1 https://twitter.com/rootport/status/1573278656016764928 不躾なことに、このtweetの発想が耳に残ってしまって離れない

*2 金色堂の調光設計には壮大なエピソードがあることを知ったためもう少し話したいが、そちらはまたいずれ。

 

参考

 

天台宗東北大本山 中尊寺
https://www.chusonji.or.jp/

建立900年 特別展「中尊寺金色堂
https://chusonji2024.jp/

『時空旅人』2024年3月号「平泉 奥州藤原氏仏国土の夢」,株式会社三栄.

tanka_202403

 

 

2024年3月に投稿した短歌です。新仮名・旧仮名の別によりまとめています。

投稿時より一部表記等を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

さくらいろ、赦されるならいいでしょうだってシビュラの宣託だから

単語で短歌「サイコパス
 
 
 

恍惚のかたちを見せて。とっぷりときみの脳波に揺れるバラード

うたの日「波」
 
 
 

「その年に浴びた光を歳入と、返した影を歳出とする」

うたの日「出」

 

 

 

 
 

焦点をひとみに置いてframeの刹那 むこうが透けるらしいよ

うたの日「刹那」
 
 
 

もういちど劇中劇を、そして春 廻り舞台のレールが軋む

単語で短歌「演劇」
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 

11-88良いパパのワンボックスの逆ハンが土曜の午後にふわりと弾む

うたの日「語呂」
 
 
 

揚々ときみが展いた真っ直ぐな唯物論はがねのつばさ

うたの日「物」
 
 
 

本当に血を濾したのが涙なら彷徨う緋をどうすればいい

うたの日「涙」

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 
 

辺つ波にたゞよふ使者の海底うなぞこに都のあるを告げに来つらむ

単語で短歌「リュウグウノツカイ
 
 
 

翡翠かはせみのやはきはたゝき卵殻にしぐるゝ海を閉ぢゆく夜半の

単語で短歌「睡眠薬
 
 
奈落その深さをはかりつつ落ちてゆくくれないの椿一輪 /松野志保『われらの狩りの掟』

しろがねの弾を含みて落ちゆける四万由旬の冥き道連れ

うたの日「地獄」

 

 

 

 
 

あえかなる被膜に雲をかゝへつゝ泡沫の身のむすびては消ぬ

うたの日「泡沫」
 
 
 

葦原に人のこゝろをたねとして久遠のフラクタルの枝先

単語で短歌「短歌」
 
 
 

梅皿にうすく溶きたる白緑をぬぐへば春の薫の染みゆきぬ

うたの日「梅」

 

 

 

 
 

明六つのくがねの底におのが身のかまびすしきをたゞに聴きをり

フリー素材で短歌
 
 
 

Lux æterna 帷を引けどつらぬける迅き残像の際もなく白

うたの日「ラテン」
 
 
高田松原津波復興祈念公園にて

もろともにふたたび植ゑて松原をおほふ若木の常盤にあをき

 

 

 


 

 

自由な3月

3月は角川「短歌」の企画 #ネット歌枕プロジェクト に参加したり、旧仮名・新仮名両方を使用するスタイルに戻したりすることで幅広く楽しめた面が大きかったです。

note.com

企画に出詠した短歌については別記事としてまとめる予定です。

 

 

お読みくださりありがとうございました。

tanka_202401-02

 

 

2024年1月に投稿した短歌です。

投稿時より一部表記等を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

閉ざされた窓íntrənèt開かれた窓íntərnèt 戯れに鍵を回してこぼれる音は

 
 
 

折り紙の花の紋章かりそめに姫を演じたちいさな庭に

うたの日「折り紙」
 
 
 

ありふれた二重盲検 さらさらと告げる真偽をぼくも知らない

うたの日「二」

 

 

 

 
 

がらがらと車輪が廻るその部屋で因果の糸を紡ぐのは誰

うたの日「輪」
 
 
 

飼われても貪狼の眼を失くさないあなたのように走りたかった

うたの日「貪」
 
 
 

〈約束〉を埋めておきます四時半の影をたどった先の花壇に

うたの日「時」

 

 

 


 

 

 

 
 

カレンダーさかさまに巻く平らかに日々を繋げるための力を

うたの日「令和六年の抱負」
 
 
 

好きな音 視界 ともだち なにもかも用意するから座っていてね

うたの日「GAFA
 
 
 

きみもぼくも指から吸い込まれていくフォンがスマートすぎた真夜中

 

 

 

 

 
 

いま綴じることもできるねドアに手をかけて第三楽章の涯

うたの日「楽」
 
 
 

天使針そっと抜いたらはばたいて在るべき場所へ君は還るの

うたの日「誤字」
 
 
 

太陽も月も水面をただ揺らす竜頭を回すものも途絶えて

うたの日「閏日

 

 

 


 

 

 

1月~2月は社会的事象と私事の双方からの影響により思うように投稿できない時期が多くペースが落ちていますが、3月中旬頃からは復調しています。

お読みくださりありがとうございました。

tanka_202312

 

 

2023年12月に投稿した短歌です。

投稿時より一部表記等を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

こみ上げる苦悶に泳ぐその日からわれらそれぞれ地底湖を持つ

うたの日「胃カメラ
 
 
 

豆ならば理由を問われることもなく四つに一つ丸くない豆

うたの日「理」
 
 
 

産地とは事切れた場所もう一度その細胞にたどり着くまで

 

 

 

 

 
工場で量産されたきみたちの中できみこそぼくだけのもの/七水とひろ

きみに手を引かれてからは特別で乾いた数字さえも光るよ

うたの日「前日の題(偶然/必然)どれかへ返歌」
 
 
 

一滴がひらく瞳孔 今しばしまひるの国の人となりたり

うたの日「眼」
 
 
 

あの海のゆらぎを帯びて貝殻は白いチョークに、言葉になった

うたの日「殻」

 

 

 


 

 

 

 
 

徒花と呼ぶなら呼べばいいやがて散り敷きましょうふたりの園を

うたの日「徒」
 
 
 

端正にショコラを嵌めてこの箱は選ばれしきみたちの庭園

短歌作ろう「チョコ」
 
 
 

今日だけは赦さなくてもゆるそうか秘蔵の茶葉を一杯足して

うたの日「濃」

 

 

 

 
 

ひそやかに降りゆくかけら夜明けまでミルクパズルを揃えるように

短歌作ろう「雪」
 
 
 

書き換える術があるなら樹形図の枝と枝とを連理となさん

うたの日「偶然/必然」
 
 
 

ただそっと、きみの記憶の宮殿のモザイクタイルのひと欠けとして

うたの日「宮」

 

 

 


 

 

 

お読みくださりありがとうございました。

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2023年11月に投稿した短歌です。

投稿時より一部表記等を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

歯車は歪みはじめた 君の眼のほのおが熔かす錆びた絡繰

うたの日「熱」
 
 
 

かき分けた暗黒物質ダークマターのその先でカフェラテ色のゆめをみている

うたの日「四句切れ」
 
 
 

気がつけば堕ちていたんだ砂時計の向こう側にはパラレルな空

うたの日「時」

 

 

 

 
 

朝夕を組曲として円盤は旋りつづける、針が欠けても

うたの日「組」
 
 
 

(光って、えらべるんだよ)白飛びの画角の中で君が振り向く

短歌作ろう「白」
 
 
 

きっとまた出会うのでしょう人知れず遠くゆがんだ軌道の上で

うたの日「出会」

 

 

 


 

 

 

 
 

双葉より際立つ彼の残り香をそれからずっとほどけずにいる

うたの日「残」
 
 
 

あこがれは霞、断崖のにじいろ この照準はまだ外さない

短歌作ろう「あこがれ」
 
 
 

ほとばしる電流だったイヤホンの線を伝わる君の鼓動は

うたの日「ほとばしる」

 

 

 

 
 

あることもないことも混ぜ笑うひと正規分布bell-curveの影くろぐろと

短歌作ろう「ベル」
 
 
 

月を裏返す気分だ脳地図の右半球を眺めるときの

うたの日「図」
 
 
 

詩の力価 ただ飲みくだす一文が毒か薬か知るべくもなく

うたの日「剤」

 

 

 


 

 

 

お読みくださりありがとうございました。

tanka_202310

 

 

2023年10月に投稿した短歌です。

投稿時より一部表記等を変更したものを含みます。

 

 

 

 
 

またひとつ陸から季語の去りゆきて果ては横たういちめんの砂

うたの日「体言止め」
 
 
 

ディストピア飯ってわらっていた頃が懐かしいよね パウチを絞る

うたの日「四句切れ」
 
 
 

なめらかなアールを抱く手の甲にDesigned by Appleの刻印

短歌作ろう「Apple
 
 
 
 
 

暗黙に途を示して殺菌灯のごとくに照らす申告の青

うたの日「インボイス制度」
 
 
 

たまごにも乱数調整望まれる方のわたしを生し得るための

うたの日「見」
 
 
 

システムをよろこばなくちゃシステムをよろこばなくちゃ  システムを

うたの日「義務」
 
 
 
 
 

気まぐれなアルゴリズムの砂塵にも体温をみた君は真摯だ

 
 
 

トリックの方をお願い、くり抜いた虚の中でなにかが見てる

短歌作ろう「ハロウィン」
 
 
 

青いまま朽ちる果実をその枝はついにほどきも育みもせず

うたの日「実」

 

 

 


 

 

 

 

 
 
 
 
 

ためらいが滲む あなたの白百合の胸にこぼれる珊瑚ひと粒

うたの日「「珊瑚」と「百」を詠み込んで」
 
 
 

2n+1のおまけのほうになることで守れる温度があった

うたの日「奇」
 
 
 

改定のたびに二円を足すように言葉を接いだ あなたは遠く

うたの日「切手」
 
 
 
 
 

瑠璃の星なりし欠片の残光を留めむとしてひとつひろへり

うたの日「瑠璃」
 
 
 

黎明を告ぐる喇叭は凍りたるみづうみを裂く陽光のごと

短歌作ろう「好きな音楽」‐シベリウスフィンランディア」より
 
 
 

天高くとなりの星につゆ草のいまコスモスの夕焼けの降る

短歌作ろう「短歌の秋」出詠
 
 
 
 
 

痴のうちに知は籠らずや蒙昧の幕に梟の羽音ひらめく

うたの日「病垂」
 
 
 

ありあまる文明の火を剝ぎ捨てて空のしづくはなほもただよふ

短歌作ろう「ジブリ映画」‐「天空の城ラピュタ」より
 
 
 

木犀の風とどきたり黄昏に連なるオブリガートとしての

短歌作ろう「金木犀

 

 

 


 

 

 

おわりに

10月分からこちらでのまとめを休止していましたが遡って掲載していきます。

9月までのように全首集約にはなりませんが、当面は抜粋とTwitter投稿用に作成した画像を併せてまとめていく予定です。

お読みくださりありがとうございました。